盛りの生命と次代の生命を表現した傑作 小倉遊亀 椿花

盛りの生命と次代の生命を表現した傑作 小倉遊亀 椿花

 金は一見きらびやかで華々しいように見えますが、光の当たらない部分には憂いにも似た陰の表情をこめています。それが私たち日本人の美意識に響応するのです。これは侘び寂と異なるように見えていて実はまったく同一のものです。古来より多くの日本画家が金を用いて作品を描いています。  小倉遊亀画伯は晩年に至るほど金を素地にした作品を多く描いていますが、今回の「椿花」は小倉遊亀画伯の美意識が顕著に表現された優品で、1969年に描かれ、第24回春の院展に出品されました。小倉画伯はさまざまな椿を好んで描いており、この作品は椿を描いた代表的な作品です。画面からはみ出すくらいにダイナミックに朱の高杯盆が描かれ、その上に盛られた二輪の椿が優美な調和を以って描かれています。  本作は小倉家の特別な許可を得て、原寸大で制作しました。

日本の伝統技「振金」を駆使

本作の特徴である「金」を再現するために、原画と同様の日本画技法である「振金」を駆使いたしました。 この技法は最終の段階で金がのる部分にニカワを付けてすぐに金粉をふりかけ、そのあと余分な金粉を一枚一枚 手作業でのぞいていくという大変な手間と神経を使う技法です。

盛りの生命と次代の生命を表現した傑作 小倉遊亀 椿花